歴史解説

舞台・あらすじ

 時代は日中戦争中期。舞台は中国大陸の華北地域・太岳戦区。この一帯では段之凡率いる国軍の旅団と八路軍が極めて良好な関係を築き、しばしば共同作戦を行っていた。物語はそんな戦区に主人公の竜紹鉄が赴任して三ヵ月後から始まる・・・・・・。


歴史解説 

 ドラマ内では、国軍・八路軍・日本軍の三つの勢力が登場し、この相互の関係が重要な要素になっているが、日本軍はともかく国軍とか八路軍って何よって人に両者の歴史的・政治的関係を解説します。

 1911年、中国では辛亥革命によって清朝が崩壊した後、革命家・孫文を筆頭に中華民国が成立。孫文は国民党を結成し、中国共産党と協力体制を築き(第一次国共合作)、国民革命軍を組織する。孫文亡き後、国民党のトップになった蒋介石によって中華民国政府による全国統一を達成する。しかしその後蒋介石は共産党と切捨て、これの殲滅を計った。共産党は労農紅軍を組織してこれに対抗。27年より第一次国共内戦が勃発する。
 31年、日本が満洲を侵略、さらに華北地域にも侵出する。この事態に、国民党(政府)と共産党は36年の西安事変を経て内戦を停止。37年に日本との全面戦争が起こると第二次国共合作の元、紅軍は独自の指揮系統を維持したまま国民革命軍に編成され、八路軍としてともに日本軍と戦う。


 つまり簡単に政権・党・軍の関係をまとめると以下のようになる。()内は別名。
・国民党=中華民国政府(国府・中央政府・国民党政権)-国民革命軍(中央軍・国軍・国府軍・国民党軍)
・中国共産党-労農紅軍→国民革命軍第八路軍

 ちなみにドラマ内では、政府軍は主に「中央軍」「国軍」と呼ばれている。


国民党と中国共産党

 国民党は簡単に(誤解を恐れずに)言えば民族主義的・プチブルジョワ的政党である。中華民国政府は国民党の政府であると言える。三民主義(民主主義・民族主義・民生主義)を掲げ、当初は国民革命の遂行,反帝国主義,中国の復興と近代化などを目的としていた。その後、徹底的な反共産主義,列強との妥協などに政策を転換した。資産家や地主などに支持され、彼らを擁護し、貧富の差や封建的風習の改善は不徹底に終わった。また地方への影響力は弱く、役人・地方軍などの腐敗が横行し民心の離反を招いた。
 
 中国共産党は共産主義国家の建設を目指し、階級闘争を行う革命党。従来、共産革命は都市の労働者(プロレタリアート)によって行われるものとされていたが、中国ではプロレタリアートの成熟が充分ではないため、毛沢東のイニシアチブによって農村・貧農に基盤を置いた革命を展開した。当時の農村では地主が土地を占有し、土地を持たない農民は小作人として法外な小作料と増え続ける借金に苦しめられる場合が多く、奴隷状態の者や生殺与奪権も握られている者もあった。また役人や地方軍の兵士の横暴な振舞いも多かった。そのため「地主の土地を没収し、平等に分配をする」という土地革命を行う共産党と厳格な規律を持つ紅軍に農民の支持が集まった。


 ドラマ中でも主人公の竜紹鉄の父親は、ある軍閥の下で将軍として働き蓄財を重ね、退役後故郷で大地主となっている。竜は非常に厳格な教育を受けはしたが、基本的には裕福であり金の心配もなくドイツに留学もした。一方、八路軍の大春は貧農で代々小作人の家の出身である。学校にも行けず、幼い頃満足に食べることもできなかったことが示唆されている。
 二人の境遇の違いは、当時の中国の二つの階層の違いを端的に表している。そしてその境遇の違いゆえに二人はそれぞれ対立する陣営に属しているのであり、その立場の違い,地主階級と貧農階級の確執を念頭に置いてドラマを見れば二人の関係がいかに不可思議で奇跡的な関係であるかをより感じられるだろう。


 日中戦争下での国軍(中央軍)と八路軍 


 第二次国共合作(抗日民族統一戦線)の下で国軍は陣地戦によって正面戦場を担当し、戦力が劣る八路軍は柔軟なゲリラ戦で国軍の作戦をサポートしたり、日本軍の後方・輸送線を撹乱したりなど役割を分担した。共産党は土地革命を停止したものの、国軍に編成された八路軍の指揮権は保持し、また各地に抗日根拠地を建設し抗戦の基盤とした。
 戦争初期、両者の関係は良好であったが、中期には矛盾が露呈し対立が起こった。政府は八路軍への物資の供給を停止し、さらに各地で国軍と八路軍が武力衝突も頻発した。しかし国軍は言わば蒋介石直系部隊と地方軍の寄せ集めであり、直系と地方軍または地方軍同士の意思統一は弱い。そのため共産党・八路軍とどのような関係を築くかはその地域の状況、およびその地域の国軍のトップの判断によるところが大きく、各地で異なっている。立場・戦力的に不利な共産党・八路軍側は、国軍が攻撃してこなければあえて自分達から関係を悪化させはしない。

 当時の中国の軍編成と名称は以下の通り。()内は日本軍の対応する単位。
方面軍-軍団-軍-師(師団)-旅(旅団)-団(連隊)-営(大隊)-連(中隊)-排(小隊)-班(分隊)


 ドラマ中の舞台となった地域では国軍と八路軍の関係は最高レベルで良好であり、中期以降になっても情報を交換し合い共同作戦を行うほどである。だがそのためその国軍である新八旅は政府や他の地方軍から警戒されている。またそのように親密な関係でも兵士たちの間には互いに対する軽蔑や不信感、警戒心が強くあることも描かれている。
 なお、日中戦争終結後、国共は大規模な内戦を行うので、それを念頭に置いて見るとドラマ内で築かれた竜紹鉄と大春・九児との関係がいかに悲劇的な未来を孕んでいるかがわかる。



 なお、この程度の説明ではドラマの背景がよくわからないという人のために何か入門書を・・・と思ったけど、新書とか気軽に読めるお勧め本はよく知らないや(このへんの時代やその用語を扱ったウィキは悪意に満ちたものが多いのであまりお勧めできない)。
 とりあえず日中戦争全体ではなく、その特異な戦場や軍事的展開(ドラマの内容は戦争全体ではなく「戦場」が主なのです)に関しては以下の本が比較的わかりやすい。

「中国抗日戦争史」

古いけどな! ←最大の欠点。
あとこれ

「抗日戦争軍事史」

全然入門書じゃないけどね! 
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