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『月夜同船2』(『剣勇伝説YAIBA』月星人過去捏造話)

『月夜同舟』1
の続きです。まだ続きます。

『月夜同船』2



 その先に一歩進むごとに明るくなっていく。

 月の上に築かれ、月星人達が暮らす広大なドーム内は、夜に設定されている時刻だった。だが緑の竹林に囲まれたこの聖地の一帯は不思議な光が溢れ、明るさに満たされている。 

 まだ子供ながら特別に月星人の聖地を訪れることを許されたツキカゲは、父の後について竹林の中を進んでいった。すべての自然や気候さえもが造り物であるこの月のドーム内にあって、この竹林だけは本物だった。元々このドームは、この聖地を中心に据えるよう設計されたのだから。

 やがて二人の前には、一本の一際太い竹が現れる。ツキカゲは思わず息を呑んだ。光は、その竹の真ん中あたりの節から発せらている。

「ご覧、新しい『かぐや』様だ」

 父がそう囁く。まぶしくて目が眩みそうであったが、父のその言葉にツキカゲはなんとか目を凝らして光り輝く竹を見ようとした。ここに新しい『かぐや』様がいる。自分が一生仕えることが定められたお方が。

「これほどの光があるなら、もう間もなく誕生されるだろう。良いか、ツキカゲ。『添え星』であるおまえの生涯はこの方にお仕えするためだけにある。心しておくのだぞ」

「はい」

 何度も周りから聞かされてきたその話しは、まだ小さなツキカゲには途方もない話しだった。だが、今初めてこの輝く竹の前に立って不思議な感情が生まれてきていた。『添え星』として生きることへの恐れと、それ以上の幸福な気持ちと。そして途方も無かった話が急に現実味を帯び、逆にゆっくりと心は落ち着いていく。

 かぐや様、もうすぐお会いできる。

 ツキカゲは心の中で自分に確認するために独白した。
 


 月の民すべてが崇拝する女帝・かぐや。『彼女』は、多くの点で他の月星人とは異なる存在だった。

 その一つが寿命。月星人は、例えば地球人と比べて長い寿命を持つが、その中でも『彼女』は飛びぬけていた。特に幼年期が終わり成熟期に入ると老化の速さが著しく遅くなり、何百年もの間同じ姿を保っている。

 しかし『不老』であっても『不死』ではない。一定の年月が過ぎるか、何らかの理由で力を使いすぎてしまうと彼女にも死が訪れる。しかしその魂は滅してしまうわけではなく、月の聖地である竹林の中の竹に宿る。その竹は光を発するようになり、その輝きが頂点に達した時に竹を割れば、中から女の赤子が得られる。それこそ『かぐや』の転生した姿。先代『かぐや』の能力と記憶や想いの一部を受け継いだ存在。他の両親から生まれる月星人たちにはこのようなことは起こらない。だからこそ彼女は唯一無二にして永遠の存在なのだ。

 

 ツキカゲが父のカゲンと一緒に聖地を出た時、一人の衛兵が駆け寄ってきた。

「カゲン将軍。『黒毛』の子供が聖地に入ろうとしていたのでこちらで拘束しているのですが、何でも将軍のご子息だと名乗っていて……」

 父の顔色が変わり、衛兵の話も終わらぬうちに詰め所に向かって歩き出す。悪い予感を感じながら、ツキカゲは父の後を追った。

 詰め所の隅に、その長い耳まで黒い毛で覆われた子供がうずくまっている。ツキカゲの予想通り、弟のゲッコーだった。すでに衛兵達からひどい扱いを受けたのか怯えた顔で小さくなっていたが、父の姿を見てそれはよけいひどくなった。

 カゲンが無言で引っ張ると、痛いのかゲッコーは小さくうめき声をあげた。

「ち、父上……ゲッコーを怒らないで……きっと私についてきたかっただけなんです。だから、許してやってください。私が悪かったんです。私がちゃんと見てなかったから……だから、お願いします、ゲッコーを放して……」

 ゲッコーを引っ張りながら乱暴な足取りで歩いていく父に、ツキカゲは必死に頼む。だが父は聞く耳を持たなかった。弟は怯えきってしまい声も出せないようだった。

 そして屋敷に着くなり、父はゲッコーを殴り倒した。

「やめてください、父上、やめて……」

 ツキカゲは慌てて二人の間に入り、ゲッコーをかばう。お兄ちゃん……。後ろから弟の震えた声が聞こえる。振り向かなくても、弟が今どれだけ助けを求めているかわかる。

「ゲッコー! 貴様、よくもこの大事な時に聖地に近づいたな。おまえのような『黒毛』の不吉な子供が!」

 だが彼のの訴えなどカゲンの激昂を静めるのに何の力にもならなかった。父はツキカゲを押しのけると彼に縋っていたゲッコーを引き離す。もうどうすることもできず、ツキカゲは父が弟を屋敷の奥に連れて行くのをを見ているしかなかった。



                                              (続く)
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