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『月夜同船』5(『剣豪勇伝説YAIBA』月星人過去捏造話)

『月夜同船』の5話目です。
 実は・・・・・・先にも書きました通り、この『月夜同船』は2年ほど前に突発的に書いたものを発掘したものなのですが・・・・・・この5話目以降の続きは書こうとしてそのまんまにしてあるのです。
 つまり、端的に言うと、この続きはまだ出来ていません(汗)

 まあ・・・・・・5話目までで一旦くぎりはついているので、ここまでで終わっても良いのですが・・・・・・もし私に書く力があればそのうち続きを書いてみようかとは思ってます。・・・・・・いつになるかは本気でわかりませんが。

 一応、だいたいの構成は2年前に出来てはいるのですが・・・・・・いろいろ描写が難しいです。ゲッコーが反乱を起こすまで追い詰められた過程とか、ゲッコー×ツキカゲらしい展開とか・・・・・・私には力不足の予感。


 ところで! 小説UPしたせいで再び月星人ブームが私の中で起きそうです。再びYAIBAコミックの月星人編とカグヤ様再登場のあたりだけ読み返しています。アニメDVDもまた借りそう。

 でもやっぱ・・・・・・

 再登場のさやか=セーラー服かぐやは反則技ですよね!!
 で、最後のツキカゲの「やはり姫はその姿が~」とかそのツキカゲを見るかぐやの表情は、反則技を軽く通り越して必殺技ですよねぇぇ!!!
 ブックオフでもだえてしまうところだった・・・・・・


 と、いうわけでもしかしたら今回で終わりかもしれませんが(新作はあるとしても半年以上後になります)、今までの展開は以下の通り。


『月夜同舟』1
『月夜同舟』2
『月夜同舟』3
『月夜同舟』4




 豪奢な衣をまとったその童女は、見た目はゲッコーと同じくらいの年に見える。だが凛々しく大人びた表情にしてもただそこに立っているだけで周りを圧倒する威圧感にしてもとても見た目通りの子供とは思えない。その白い毛並みはまるで日の光を浴びて輝く新雪のような美しさだった。

「かぐや様!」

 カゲンは慌てて剣を収め、その場に跪いた。ツキカゲも突然の展開にとまどい、ゲッコーを抱きしめたまま頭を下げる。

「姫……申し訳ございませぬ。我らの不手際で、姫の宮を汚す賊の侵入を許してしまいました。二度とこのようなことが起こらぬようこれより宮の外で賊を処分致しますので、何卒お許しください」

 ツキカゲはそっとかぐやを窺った。彼女はゲッコーより遅くに生まれたが、他の月星人に比べて幼年期の成長の速さが早く、もう同じくらいになってしまっている。
 
 かぐやは気のない感じでカゲンの話を聞いていた。そしてカゲンからツキカゲへ、その腕の中のゲッコーへと視線を移し、何事かを思案しているようである。

「ふむ……」

「かぐや様、後は我らにまかせてどうぞお戻りください。この場にいては、姫の身が穢れます。どうぞ……」

「その黒いのはわらわが呼んだのじゃ」

 突然、かぐやがさらりと言った。ツキカゲは驚いて顔を上げる。……はっ? と父も呆けた声を出した。

「ツキカゲの弟に珍しい『黒毛』がいると聞いての。ツキカゲに連れてこさせたのじゃ。わらわはまだ『黒毛』など見たことがないからのう」

 ツキカゲは以前かぐやに聞かれて弟のことを少し話したことがある。その時はそれっきりで、もちろんかぐやの元へ連れてこいなどと命じられてもいない。

「姫……なんということを……ご存知ではありませぬか。『黒毛』は凶星の生まれ。近づけば姫の御身に災いがもたらされると……」

「戯けたことを申すな、カゲン。白だろうが黒だろうがしょせんはわらわの臣。わらわが臣の一人がもたらす災いごときにどうにかなると思うか」

 かぐやはさもおかしそうに笑いながら言う。だが、その目には冷たい光が宿っているのをツキカゲは見てとった。

「しかし姫!」

「ああ、もう良い。わらわはその二人に用がある。そなたは下がれ……聞こえぬか? 下がれと言っておるのじゃぞ」

 それは穏やかな声だったが、不思議と逆らえぬ響きがあった。もうカゲンは従うしかない。ゲッコーを睨んだ後、礼をして下がろうとしたカゲンにかぐやはさらに声をかける。

「……カゲンよ。またいつか気が向いたらこの黒いのを呼ぶからの。そのつもりでいるのじゃぞ」

「……はっ」

 カゲンは苦々しい声で返答して部屋を出ていった。危機が去り、ツキカゲの全身から力が抜ける。

「かぐや様、あの……」

 おそらくかぐやは、三人の様子を見ただけで状況を察し、ゲッコーの命を救ってくれたのだ。しかも、いつかまた呼ぶ、と言ってくれたおかげで、父が後で処分することもなくなった。

「そなた、名はなんと申す」

 かぐやはツキカゲの言を遮り、ゲッコーに問いかけた。非礼に気づいたツキカゲはゲッコーを放し、跪く。

 だが事態の変化について行けないのか、ゲッコーは呆然とかぐやを見つめるだけだった。まさかかぐやが自分に話しかけてくるとは思ってもいなかったであろう。

「ゲッコー、姫の御前だぞ」

 ツキカゲに注意され、ゲッコーも慌てて兄に倣い跪く。

「……あ、あの……ゲッコーと申します、姫様」

「ふむ、ゲッコー、か。それにしてもそなた……本当に真っ黒じゃのう!」

 さも珍しいものを見るように、しげしげとゲッコーを眺めてくる。ゲッコーはかぐやがどういうつもりで言っているのかわからず兄を窺う。だが、ツキカゲもかぐやの真意が読めないでいた。

 と、ふいにかぐやが手を伸ばし、ゲッコーに触れようとしてきた。

「姫!」

 ツキカゲは思わず、彼女を止めようとしてしまった。ゲッコーも驚いて後ろにさがる。

「どうした、おまえ『たち』?」

 かぐやのからかうような問いに、ツキカゲは答えられなかった。あの一瞬、『黒毛』は姫に災いをもたらす、という言葉が頭をよぎったなどと。まさか、自分がそんなことを思うなんて……。

「あの……ぼくは『黒毛』で……かぐや様の身に悪いことが……」

「ふん。おまえが何色だろうと、おまえごときの災いとやらにどうこうされるわらわではないわ。自惚れるな。さっ、わらわは一度『黒毛』の毛並みがどのようなものか、触らせよ」

 言うなり、今度こそかぐやはゲッコーの頭に無造作に手を置いた。

(かぐや様……)

 ツキカゲは息を呑んだ。こんな光景を見ることができるとは、夢にも思わなかった。

 別に普通じゃのう。かぐやがゲッコーの頭をやや乱暴にいじりながら言う。こらえきれなくなったのかゲッコーの目から涙がボロボロとこぼれ落ちた。この何気ない行動が、弟にはどれだけ嬉しいことだろうか。

 ……と、ツキカゲはふいにあることを思い出した。

「ゲッコー、注意しろよ、姫は……」

「……いたっ! 姫、あの、痛いで…いたたっっっっ!」

「ホホホ! おお! 久しぶりに引っかかるのがおったわい」

「……耳、引っ張るのお好きだから……」

 遅かった。かぐやは、すっかり無防備になったゲッコーの耳を思いっきりつかんで引っ張っていた。

 月星人の長い耳は、彼らの力の源であり、また弱点でもある。特に引っ張られたりすると、とても痛い。そして悪いことに、その耳を引っ張って遊ぶのが姫の最近のお気に入りだったりした。

 かぐやは先刻までの大人びた雰囲気から一転し、見た目通りのあどけない童女の顔で楽しそうに笑っている。やっていることはかなりえげつないが……

「ツキカゲは最近すっかり警戒しおって、ちっとも隙を作らぬからのう。退屈しておったところじゃ」

「申し訳ありません。姫様のお戯れに一から十までつきあっていては、私の身が持ちませぬので」

 命令によってではなく、不意打ちで引っ張るのが好きなのであって、細心の注意を払っていれば(少しは)被害を免れることができることがせめてもの救い。……と、ツキカゲは思っていたが、とりあえずそんなことは今耳を引っ張られている弟にはなんの慰めにもならない。

「……った、いたっ…お兄ちゃん、何これ、聞いてないよ、いたっいた!」

「いや、言ってないし……その、姫はまあ、こういうところもあるお方で……」

 先代の『かぐや』様は、清楚でおとなしく慈母のような方だったという。だから人々はその転生である新しい『かぐや』様も同じような性格だと思っているらしいが、実際は違うわけで。

「あの、かぐや様、よろしければそろそろ弟を放してはくださりませんか?……その、ちょっとぐったりしてきたようなので。もし気がお済でしたら……」

「済んでおらぬ。せっかくの客人じゃからのう、今日はこやつ<で>遊ぼう」

「……<で>?」

 なにやら不穏な言い回しに、ゲッコーが反応する。ツキカゲは弟を安心させようと言ってやった。

「……心配するな、ちょっと姫のお相手をすればいいんだ。無事に帰れるよう、俺も一緒に行くから」

「……無事? ……いたっ! 姫、やめてくだ……たたっ!」

 いったいその幼い体のどこにそんな力があるのか、すっかり上機嫌になったかぐやは、ゲッコーの耳を引っ張って易々と引き摺っていく。  

 ツキカゲはその後についてかぐやの部屋へと向かった。……まあ、一緒に行ったとしてもいないよりはマシ程度のことしかできないだろうけど、などと心中で呟きながら。



「……かぐや様。……我々はそろそろお暇致したいのですが……その、ゲッコーもこのあり様では、もう今日は姫のお相手は無理かと存じます」

 あれから数時間後、ツキカゲはごく控えめに申し出てみた。彼の膝の上には、何故かぼろぼろになっているゲッコーが疲れて倒れこんでいる。ツキカゲもだいぶ疲れていたが、弟よりは数段ましであった。

 札遊び、将棋、はじき、宮の中での隠れ鬼遊び。かぐやが二人につき合わせた遊びは、名前だけ見るならごくたわいないものばかりだった。どこにもゲッコーがぼろぼろになる要素はない。だがそれはやはり月の国最強の力を持つかぐやのお遊び。他の月の民にとっては何かと危険も多いわけである。

 例えば、この部屋の隣室。そこはかぐやのせいでつい先ほど壊滅してしまっていた。彼女に言わせれば、「ちょっと手が滑った」とのこと。もっともその程度の破壊であればよくあることなので、数日後には宮を管理する大人達が直しておいてくれるだろうが。

「なんじゃ、ふがいないのう。そなたの弟ともあろう者が」

「私はもう慣れましたから」

 かぐやの「遊び相手」を務めるのは時として命の危機さえ伴う。だがツキカゲは数々の危険を乗り越えたすえ、力の抜きどころも、危険の回避の仕方もわかるようになってきた。だが初めてのゲッコーはあまりに真剣に姫につきあってこんなにボロボロになってしまったわけだ。

 かぐやはそう言いながらも、とりあえず満足したようである。二人に家に帰る許可を与えてくれた。

「……あ、あの。かぐや様……」

 ふいにそれまで倒れこんでいたゲッコーが、残った気力を振り絞るように身を起す。

「なんじゃ」

「ぼく、……いえ、私もいつか兄のようにかぐや様にお仕えしたいです。その……私みたいな『黒毛』でも姫にお仕えできますか?」

「ゲッコー!」

 ツキカゲは小さく弟を咎めた。仕官するのは、触られたり一日遊び相手をしたりするのとは訳が違う。絶対に誰にも許されないだろう。ゲッコーだってつらい思いをするだけだ。だが、ゲッコーはツキカゲの声が聞こえなかったかのように、かぐやの返事を待っていた。そしてかぐやは、その問いがいかにもおかしいとばかりに笑いながら言った。

「そなたもおかしなことを申すの。わらわの役に立つだけの力があれば仕官できる。なければできない。それだけの話じゃ。……もっとも、この程度でそのあり様になるようでは話しにもならんがな」

 ……かぐや様もあまり気軽に仰らないでほしい。弟が真に受けてしまう。そしてツキカゲの思った通り、ゲッコーは真剣な声で応えた。

「なります。もっと強くなります。だからいつかかぐや様に……」

 そこまで言って気力がつきたのか、ゲッコーはまた倒れてしまう。好きにせい、かぐやが笑いながら応じた。

「かぐや様……今日のことですが……」

「うむ?」

 弟が眠ってしまったのを確かめたツキカゲは、かぐやに向き合い叩頭して言った。

「弟の件、なんとお礼を申し上げていいかわかりませぬ。すべてかぐや様のおかげでございます!」

 先刻からずっと礼を言いたかった。もちろん今自分で言ったかのように、この堰を切ったかのように溢れ出てくる感謝の念を伝えるだけの言葉など見つかりはしない。だがそれでも最大限、例え万分の一に過ぎなくてもかぐやに伝えたかった。

「……ああ、カゲンのことか。あの程度のこと、気にするでない。少々気が向いただけのことじゃ」

 確かに彼女にとってはほんの気まぐれ、些事だったかもしれない。明日になればもう忘れているかもしれない。だが……

「いえ、あの時姫が気にかけてくださらなければ、私はすでに弟を永遠に失っていたところでした」

 そう、ツキカゲにはあの時ゲッコーを助ける術がなかった。だがかぐやは、ほんの二言、三言で後々まで弟の安全を保障してくれた。それだけではない。皆が敬愛する姫に不幸をもたらすからと言われ遠ざけられてきたのに、その当の姫が事も無げに己に触れ、おまえの災いなど何ほどの事もないと言ってのけてくれたこと。あれがゲッコーにはどれほど嬉しかったことか。そしてツキカゲもどれだけその光景が嬉しかったことか。

 あの時、初めて弟の心は救われたのだと思う。ツキカゲにはその時々に彼をかばい、慰めてやるしかできなかったというのに、彼女はいとも簡単にやってのけてくれた。

「このことは生涯忘れません。どうぞこれからも姫に仕えることをお許しください。弟の分まで、このご恩に報わせてください」

「その言に偽りはないか、ツキカゲ?」

 かぐやの言葉には、少しの欺瞞も見抜き許さぬような響きがあった。だが、ツキカゲには恐れることは何もない。

 『添え星』と定められて今日までずっとかぐやに忠誠を誓ってきた。彼女のために生きて死ぬ覚悟もついていた。その気持ちに嘘偽りは一片たりともない。だが、あの瞬間の感謝の念の深さに比べれば、それさえもまだまだ浅い決意だった。今日ほど彼女を慕わしく感じたことはなかった。今日ほど彼女のために尽くしていきたいと感じたことはなかった。

 ツキカゲは顔をあげて答える。

「はい。かぐや様」

「……よろしい。ツキカゲよ、早くわらわの役に立てるようになれ。わらわは無能な者はいらん。期待に添えなければ、おまえとて容赦はせん」

「心得ております、姫」

 ツキカゲはもう一度深く叩頭する。

 後で思えば、『添え星』に定められた日でもなく、かぐやに初めて引き合わされた日でもなく、この日こそ自分がかぐやに仕え始めた日であった。
 


(終)



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