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第18話 結束 19話 綻び

あらすじ


 八路軍のために死地に赴くことに嫌気がさした方儀球は、隊列から離れ行方をくらます。探しに行った銭国良もかえって方儀球につき合わされることになる。
 方儀球は安定しない兵隊人生の中で、この年になっても妻子を持てなかった自分の人生を自嘲し、妻がいる銭国良がうらやましいという。しかし銭国良もまた、戦争で3年ほど家を留守にし、戦争で貯めた金をはたいて指輪を買って帰ったら、妻には別の男ができていた、という過去を語る。二人は夜の森の中で、つくづくついていなかった自分達の人生を語りあう。
 大春は自分達がこれから進む道には必ず芥川が待ち構えているだろうが、八路軍長官国軍の戦区長官の衛立煌との会談の時間に間に合わすため、道を変えることはできない、と竜紹鉄に説明する。なぜなら、衛長官は最近八路軍に不信感を持つようになっており、また国民党の会議に出席するため重慶に発つ時間が迫っている。もし八路軍の長官が会談の時間に間に合わなかったら、八路軍への不信を決定的にしたまま重慶に発つことになってしまう。だから芥川が待ち構えていようとも最短の道を突破するしかない、と。
 大春は八路軍が芥川ら日本軍と戦っている隙に、国軍が八路軍長官を護衛して突破してほしいと頼み、日本軍との戦闘を開始する。また、もし自分に何かあったら後を頼むとも言う。
 いったんはその言葉を受け入れた竜紹鉄。だが、大春らが苦戦するのを見て、石頭らに長官の護衛をまかせ、加勢に加わるものの危険な状況が続く。

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戦況を打開するため飛び出す大春
 
  
 その時、森の中から銭国良と方儀球が加勢に加わり、竜紹鉄と芥川の対決を援護する。銭国良,方儀球,九児らが負傷していく中で例の謎の狙撃手が現れて竜を助け、両軍は日本軍の包囲を突破し、八路軍長官を無事送り届ける。
 竜紹鉄は負傷した銭国良と方儀球を見舞い、今までの上官と部下というよそよそしい関係を改め、二人に歩み寄るよう努めることにする。

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方儀球にタバコを吸わせてやる竜紹鉄

 しかし文軒は竜紹鉄の八路軍との共同行動を問題視し、彼を新八旅本部での謹慎処分とし、体調が思わしくない蘇雲暁を案じながらも出張に出かける。
 中国の別の戦地にいる弟と手紙のやりとりをする芥川は、天皇陛下のためにがんばるよう弟を激励する。しかし、その後外で一人物思いに沈んでいた時、通りかかった子どもを思わず撃ち殺してしまう。
 出血に気づいた蘇雲暁は婦人科に行こうとし途中で倒れる。竜紹鉄は彼女のために謹慎処分を破って、日本軍が支配する県城の病院に押し入り、日本人医師に治療を要求する。
 医師は彼女は流産しかけており、子宮を除去しなければ命を落とすと告げる。竜紹鉄は蘇が二度と子どもを産めない体にしたくはなかったが、どうしようもなかった。

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蘇雲暁を救うよう医者に迫る竜

 出張から帰った文軒は妻の危機を知り、部隊を率いて県城に戻る。手術を終えた蘇雲暁竜紹鉄は軍服を脱いで県城を抜け出ようとするが、運悪く芥川に見つかってしまう。
 何とか蘇を連れて県城の外まで逃げた竜だが、そのまま芥川ら日本軍と銃撃戦になってしまう。そこに文軒らが駆けつけ、蘇を連れて脱出する。
 文軒は、妻が子どもを産めない身体になったことに衝撃を受けるが、己を責める蘇を必死で労わる。蘇雲暁は文軒に自分との離婚を勧めるが、文軒は同意しない。文軒は、すべては日本軍のせい、戦争のせいだと言って妻を慰める。二人は戦争がなかったら自分達は何をしていただろうと語りあう。文軒は教師になりたかったと言い、看護婦になりたかったという蘇に、きっと本当の天使のようだろうと言う。しかしなぜか蘇雲暁は「自分は悪魔」だと言い張る。
 文軒は竜紹鉄を訪ね、蘇雲暁に何かあったら自分も生きてはいけなかったと言って、妻だけでなく自分を救ってくれた礼を言う。その上で、もし竜紹鉄が共産党や日本と通じ、党と国の敵となるならばそれは自分の敵であり、必ず君を殺すだろうと言う。しかし、すべての問題が解決した時がもし来たら、二人で酒を飲み交わしたいと告げる。
 回復した蘇雲暁は、戦争で両親を失った子どもを養子にしたいと言い、文軒も喜んで同意する。蘇雲暁は文軒に秘密で県城で孤児の世話をしている教会に行き、marryという少女を養子に取る手続きをしてくる。養子を取ることを心から喜んで話す蘇雲暁に竜紹鉄も彼女の再出発を喜ぶ。
 竜紹鉄と九児の関係に思い悩む大春は、つい二人のことを林団長に話してしまう。林団長は問題視し、九児を呼び出して竜紹鉄とは階級的立場が違い、共産党員としてこのようなことは慎むべきだと指導するが、九児は受け付けない。
 九児は大春を非難するが、大春は竜のことを深く理解するゆえに「竜紹鉄は彼なりの固い信念を持っており、決して共産党に来ることはないだろう」と現実を諭す。
 岡崎は「狙撃者は殺戮者ではない」とかつて芥川自身が言った言葉で、彼が子どもを殺したのは間違いだと指摘するが、いらだつ芥川に殴られてしまう。
 そして芥川の元には、弟の戦死の報が届いた。彼は三人いる弟の最後の一人であった。

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遺品として送られてきた最後の弟の写真とお守りに顔をふせる芥川

 芥川は弟の遺影を先に戦死した弟たちの仏壇に飾り、彼らが持っていたお守りを持って衝動的に新八旅の武器庫を襲撃する。



感想


 無事、八路軍長官を送り届けた国共連合軍。ここ数回で人間的に丸くなってきていた竜紹鉄はますます丸くなり、やはりどこかで線を引いてしまっていた銭国良や方儀球とも上官と部下ではなく兄弟的な関係を築いていく。
 しかし物語としての蜜月期間は、ここでシンジの成長物語が破綻した(95年)エヴァのように終わりをつげてしまう。

 その始まりは、蘇雲暁の流産とそれが原因の子宮切除。このへん、戦場描写とはまた別にやけに生々しくて見るに忍びない。かつて家族をすべて南京虐殺で失い、その後、一度は生まれた子供も失い、それでも蘇雲暁と暖かい家庭を築くことを夢見た文軒のことを思へば、その悲劇性は増大する。
 それでも蘇雲暁は孤児を引き取って育てることに希望を見出し、立ち直っていくが・・・・・・さて。


 一方、とうとう芥川も壊れ始めてきた。
 失敗続きに苛立っていたのか一人もの思いに沈んでいた時にたまたま通りかかった子供に殺意を抱き・・・何の理由もなく射殺してしまうのだった。

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逃げる子供を狙い撃つ芥川


 こんな行為は今までの芥川にはありえないことであった。芥川を尊敬する岡崎もこの件についてははっきりと非難している。

岡崎「少佐、前言ったが、『狙撃手は殺戮者ではなく平民は殺さない』食言した!」
芥川「うるさい!」(岡崎を殴る)

 


  狙撃者は殺戮者ではない。


 この言葉こそ芥川を特異な人物たらしめているゆえんであり、また組織ではなく自分の規律のみに従う芥川が自ら自己に課してきた規律であり、狙撃である彼のプライドそのものである。
 それを芥川は破った。無力でしかも逃げている子供を狙い撃つというおそらく今まで彼がもっとも軽蔑していた行為で。

 ただ、この段階でまだ芥川は自分の何かが狂い初めてきたことにとまどっていた。だからこそ岡崎に非難された時に殴って黙らせたのだ。


 ところでこの事件を起こす前、芥川は弟に宛てて手紙を書いている。彼の弟は中国戦線の別の場所で戦い、なにやらこの戦争に対する疑問を書いた手紙を送ってきていたらしい。それに対して芥川は「天皇陛下のために国のために命を捧げる覚悟でいてほしい」と諭す手紙を書いていたのだ。
 それでも手紙の全体の雰囲気は優しく、彼がこの弟と手紙をやりとりするのを楽しみにしている様子が伺える。

 その後、件の子供射殺事件を起こした後の芥川の元にまた手紙が来る。中に入っていたのは弟の写真と身に着けていたお守り、そして弟の戦死を知らせる手紙であった。芥川が手紙で諭したように、弟は「天皇陛下のため国のため」命を落とすことになった。
 芥川は呆けているとも思えるほど緩慢な動作で、その写真とお守りをを部屋の仏壇に飾る。そこにはすでに二人の弟の遺影があった。今回戦死した弟は芥川の三人いた弟の最後の一人であった。

 仏壇に飾った写真を見ながら、芥川は奇怪な表情を浮かべる。すべての弟が失われたことを泣けばいいのか、自分一人だけ仏壇の外にいる(生き残っている)ことを嘲笑えばいいのかわからないような顔を。このへん矢野浩二の演技がたいへん秀逸で、芥川の絶望がかえってダイレクトに伝わってくる印象深いシーンであった。

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 そして次の瞬間、芥川の絶望と悲しみは一気に憎しみへと転化される。
 静から動へ。芥川は弟たちが身につけていたお守りを三つとも首にかけると駐屯地を飛び出し、闇にまぎれて新八旅の武器庫を攻撃。それは衝動的に子供を殺した時とは別の、冷めた確信的狂気であった。



 武器庫の爆発を背中に静かに去っていく芥川の姿に、今後起こるであろう悪夢を想像せずにはいられない場面である。

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 実は私には芥川の「弟を殺された憎しみ」について思うところがあるのだが、それはまた次会改めて書こうと思う。
 
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