『鎖』(APH・イヴァギル)

 え~どういうわけかとーとつにAPHの女性向け二次創作です。しかもイヴァン×ギルベルトです。さらに言えばイヴァギルに見えて王耀←イヴァ×ギルです。

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 え~と、実を言うとイヴァギルって特に萌えっていうわけじゃなかったんですけど、まあそれなりに興味あるCPで(APHの本命はアルアサ)、何かパッと小品が思いついたので書いてみました。
 小説はついついわりあい長いネタばかりになって、そのため時間が無い状況では結局どれも書けないままで終わっていたもので、小品を多く書けるようにしなきゃならないと思って思いついたのがなぜかこれ・・・・・・でも思っていたより長くなりました。本来の目的からすれば1日くらいでチャチャと片付けるべきなのに、やっぱり完成までにちょっと時間かかってしまいましたorz


 初めてのAPH、しかもほとんどノーマークだったイヴァギル(なぜか「ユキウサギ」って言うんですねこのCP、最近知りました)で、さんざんな出来ですが、よろしければどうぞ。ちなみに年齢制限はありません。イヴァ王もそれなりにいいと思いますけど、今回は完全にイヴァンの片思い。指一本触れられませんでした(笑)。

「・・・・・・なんで、テメェがここにいんだよ」
 仕事から帰ったばかりのギルベルトはあからさまに顔をしかめ、不機嫌極まり無い声でそう言った。彼の自室のベッドにはさも当然のように大柄な男が寝転がっている。
「え~~、そんな嫌そうな顔しないでよ、ギルベルト君」
 やや間の抜けた、とも言えるような声でベッドの男-イヴァンは身を起こしながら言う。
「せっかく忙しいなか時間作って君に会いに来たっていうのに」
 イヴァンはプゥと口をとがらせて言う。ギルベルトは不機嫌さを隠さず答える。
「忙しいのは俺だって同じだ、てめぇの相手している時間なんてねぇんだよ」
 相手して欲しけりゃ”あいつ”のこと行きゃいいだろうが、という言葉は寸でのところで飲み込んだ。
「またまたぁ、君だってぼくに会いたかったくせに」
 しかしイヴァンはギルベルトの言葉など意に介さずそう言う。実際、イヴァンがギルベルトの都合も抗議も顧みたことなどあの壁が出来た時から一度たりとて無い。
「ねぇ、早くおいで、ね?」
 イヴァンの言葉にギルベルトは小さく舌打ちしたが、それ以上逆らえるはずもなくベッドに歩み寄る。イヴァンの大きな手が彼を抱き寄せ、ギルベルトは抵抗もなく彼の胸に身をゆだねる。
「あいかわらず何だかあったかい気持ちになるよ、君のキス」
「あいかわらず、あんたの唇は冷てぇよ」
 そのまま口づけを交わした後、イヴァンの嬉しそうな声にギルベルトは口を少し歪めた不敵な笑みを浮かべながらそう言ってやる。イヴァンはおかしそうにコロコロ笑って、ギルベルトを抱いたままベッドに倒れこんだ。


(・・・・・・たっく、本当に疲れてやがったんだな)
 イヴァンはギルベルトの膝を枕にしてスヤスヤと眠っている。てっきり自分を抱きに来たのかと思ったら、倒れこんだベッドの上で何度かの短い口づけと少しだけの愛撫を加えただけで、あとはギルベルトに膝枕をさせてさっさと眠ってしまった。
(疲れているなら自分の家でとっとと眠りゃいいのに、わざわざ俺の家まで来て人(?)を枕代わりにするこったねぇだろ!)
 心の中でさっきから悪態をつきつつ、まあ俺も疲れていたし相手をしなくていいならそれはそれで・・・・・・と思いかけ、今の状態では結局自分は眠れないことに気づいてギルベルトの怒りはぶり返した。
 イヴァンはいつもギルベルトに対して勝手気ままに振舞う。放っておくときは長期間放っておくくせに、来るときはギルベルトの都合はお構いなしで来ては、幼子がお気に入りの玩具で遊ぶようにギルベルトを扱い、そうかと思えば母にするように甘えかかってくる。
 ギルベルトはそんなイヴァンをいつも苦虫を噛み潰したような顔と悪態で出迎える。全身で拒絶オーラを出して、自分がイヴァンを嫌っていることを伝えようとする。
(・・・・・・だってよ)
 だって笑顔と甘い言葉で迎えるのはあまりに惨めではないか。この子どものような残酷さと純粋さをあわせ持ち、そのアンバランスさと孤独に魅かれて止まない男に、来てくれて嬉しい、会いたかった、などと本当の気持ちをあからさまにするのは・・・・・・騎士の血を引く誇り高きギルベルトには自分の中に生まれたそのあさましさは耐え難いものであった。
 だからイヴァンが来る時はいつも気持ちを硬くしてよけい疲れるのだが、その点、今のように熟睡しているイヴァンはいい。今のうちなら硬く心を覆った鎧を脱いでもよさそうだ。
(・・・・・・ほんと、こーして見ると、なんだかまだ子どもみたいな・・・・・・)
 ギルベルトがそっと髪をなでると、ぅん、とイヴァンがみじろぎした。起こしてしまったか、とギルベルトは身構えるが・・・・・・
「・・・・・・ぅ君・・・・・・」
 イヴァンは小さく何か寝言を言っただけで、スヤスヤと眠り続けた。小さな声だったが、ギルベルトには何を言ったかわかった。そして、一瞬、彼の首を絞めてやりたい衝動に襲われた。夢の中で自分以外の愛しい相手を呼ぶ男に。


(くっそっ・・・・・・)
『会いたかったよ、ギルベルト君・・・・・・もうずっと会ってなくて寂しくて仕方なかったから、みんなにもナイショで来ちゃった・・・・・・帰ったら上司に怒られちゃうけど君に会うためならなんでもないよ・・・・・・ねぇギルベルト君、君はぼくに会えなくて寂しくなかったの・・・・・・たまには素直に笑ってくれると嬉しいな・・・・・・ぼくは君のことをこんなに好きなのに・・・・・・』
 イヴァンが眠りに着く前、自分の身体を愛撫しながらささやく声が蘇ってくる。なりは大きくても心はどこか幼いままのイヴァンらしい稚拙で単純な、だからこそ真っ直ぐ思いが伝わってくる甘い言葉・・・・・・
(この嘘つき野郎め!)
 ギルベルトは知っている。最近、イヴァンがあの「東洋の男」に手ひどく拒絶されたことを。
 あの「東洋の男」-肩までのばした濡れるような漆黒の黒髪、東洋人のくせにどこか深雪を思わせる白い肌、切れ長のきつそうな目、自分もイヴァンもまだ幼かった時代にすでに成熟していた国。ギルベルト自身とはあまり関わり無い国であったが弟のかつての盟友・本田の兄だという。そして・・・・・・
 そしてイヴァンが自分を手に入れる前から、そして今でも執着し追い求めてやまない相手。
 イヴァンはこの100年あまり、その男を手に入れようとしては何度も何度も拒絶されてきた。そしてつい最近、イヴァンは「また次の機会に」などと思う余地もまったくないほど徹底的に拒否されたのだと、噂で聞いた。
 イヴァンはずっと彼を欲しがっていた。それがままならないままらずもがいていたイヴァンがひょんなことから手に入れ気に入った男、それがギルベルトだった。
 ギルベルトは知っている。イヴァンが長く自分の元を訪れなかったのは、なにやら風向きが変わりあの男が手に入りそうな情勢になったからだ。イヴァンはギルベルトのことも他のこともすべて忘れ、この機会を逃すまいと必死にアプローチしていた、とこれまた噂で聞いた。そしてそのあげくさんざんもめ、修羅場となり、完全に破局するという結果に終わったのだ。
 そして、傷ついたイヴァンはギルベルトの元を訪れてきた。
(おまえは本当にひどい奴だよ・・・・・・)
 自分を愛しているというイヴァンの言葉に嘘はない。別の男を一番に思いながらギルベルトだけを愛している、という言葉にさえも。少なくともイヴァンの中では。
 ギルベルトを気に入っているというのは本当だし、寂しがりやだから甘えたい。あの男が手にはいらないから、この寂しさを埋める相手が欲しい。本当に好きな相手は手に入らないという現実を見たくないから、<ギルベルトだけを愛している>・・・・・・でも夢の中では本当に欲しい相手を求める、自分と別れ家に戻れば黒髪の男のことを考えている。何か手ごたえがありそうだと思えば、自分のことなど思い出しもせずあの男のもとへ行き、拒絶されてはギルベルトの元へ戻ってくる。
 確かに自分からは絶対に他の男のへ思いを口にしないし、起きている時にそれがばれないようにする程度の配慮はしている。だが、ギルベルトの耳に届くほど噂が立つのにはあまり頓着していないようである。
 残酷な子どもが無邪気にすべてを欲しがっている。それがなにを意味するのかも自覚せずに。
 だが、イヴァンが東洋の男に求愛することは二度と無い。それほどにひどい破局だったという。だから自分はもう一人思い煩わなくていいのだろうか?
(そんなわけあるか)
 ギルベルトはイヴァンが脱いだコートに何か小さな赤い切れ端がついているのを見つけた。おそらく星の形の一部らしき模様もある・・・・・・・それはかの国の国旗であった。イヴァンがズタズタに引き裂き、その切れ端が知らずにコートにくっついていたのだ。
『ぼくのものにならないものなんていらないんだよ』
 最初の頃、抵抗していたギルベルトをベッドの上で押さえつけそうささやかれたことがある。今思えば、彼なりの愛の言葉であったそれも自分に向けて言ったものではないのかもしれない。
 イヴァンはきっとこれからは自分を拒んだ東洋の男に報復しようとする。そうすることでイヴァンの思いは生き続ける。なんのことはない、執着の形が反転しただけだ。
 今すぐナイフでこの男の喉を刺し、そのまま同じナイフで自分の喉を刺して一緒に死にたい。そうすれば今自分の身を焼いている嫉妬の炎の苦しみから解放される。
 認めたくなかった。自分は激しく嫉妬していた。しかもそれは、その東洋の男が自分とは違いイヴァンの束縛からついに逃げ出したその自由に対してではない。あろうことか、彼がイヴァンの心を束縛していることに対してだ。あさましい、自分はいつからこんなに墜ちてしまったのだろう。
 東洋の男はイヴァンの束縛から逃げ出し、イヴァンはその男への思いに囚われ、ギルベルトはその東洋の男が持つ見えざる鎖が欲しい、だからギルベルトはイヴァンの束縛から逃げられない。

 ギルベルトは身をかがめそっとイヴァンの唇に唇を重ねる。
「・・・・・・冷たい」
 イヴァンの唇は相変わらず氷のようで、自分の身体が芯から冷えていくようだ。それでも、ギルベルトの魂を焼く醜い嫉妬の炎は少しも弱まることはなかった。


                                        (終わり)
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