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中国における評価と監督の言葉

「狙撃手」は中国でなかなかの高視聴率を獲得したらしく、またネット上でも多くの議論を巻き起こしているようです。
 私が見たある掲示板では七割がアンチでした(笑)。まあ、そこはちょっと偏った書込みが多くなるような掲示板でしたけど(日本だって2chやyahooニュースの掲示板なんかは超偏っていますし)

 このドラマの立ち位置を理解してもらうために、中国での評価や監督の言葉などを紹介しときますね。
・日本軍人・芥川の描写

 芥川役の矢野氏のブログにこんなことが書かれていました。

「報道によると≪日本人が英雄すぎる、矢野演じる芥川はドラマの中で多くの争論を引き起こしている。一方で彼が演じた芥川が最も優れている、ドラマの中での彼の役は唯一の“明るい材料”という視聴者の感想。且つ別の方面では義理や人情が濃い日本人を英雄に仕立てあげた役は受け入れられないという視聴者の感想。≫」


 まあ、芥川はやっぱりダーティ・ヒーローでしたし、その側面から充分に魅力的・印象的そして「人間的」だったと思いますよ(矢野氏の演技が圧倒的だったなおかげで)。

 ところで日本軍人が「人間的」に描かれることに対して、中国の監督の考え方や中国人の視聴者の意見はひとまずおいといて、日本人がそのことを歓迎してしまうことについて。
 『南京! 南京!』という映画の評価でもちらほら散見されましたが、中国で日本軍人が「人間的」に描かれることに対して手放しで喜んでいる日本人が多いと思いますが、私としては、ちょっと簡単には(その喜びに)賛同できないです。これは「中国側には実はこういう思惑があるから」とか穿った見方をしているからじゃなく、単純に日本人がそれを喜ぶことの問題についてです。
 この「人間らしい日本軍人にしてほしいという欲望」については、いつか別ブログでゆっくり書きたいと思いますので、書いたら転載しときます。

 なにはともあれ、ドラマとしては「人間的」なキャラにした方がドラマ全体に深みが出ますし、何より矢野氏の心構えと演技力がたいへん素晴しいことは確かです。
 また監督の高希希氏は芥川の「英雄的描写」に対して。

「敵を強大で陰険かつ凶悪に描けば、抗日戦争がいかに困難な戦いであるかがよりはっきりとする。芥川は鬼子ではあるが、人間だ。彼は高等教育も受けている。当時の中国の士兵と日本の士兵のレベルは十倍くらい違った。だからこそ、敵の猛烈さを表現することは、中国の士兵の大いなる知恵と勇気を表現することにつながる」




・「惰弱」な主人公

 さてこの日本軍人が「英雄」のごとく描かれていることに関する中国での批判ですが、これはそれを倒すべき中国側の主人公が「惰弱」であることに深く関連した批判だと思います。
 実は日本軍人を「かっこよく」描くこと自体はそれなりに最近は珍しくないと思います。しかしその条件として中国側の抗日の闘志(国軍でも八路軍でも民兵でもいいのですが)はそれよりさらにかっこよく男らしくなくてはならない、という不文律があるように思えます。
 男らしく、と言ってもあんまりマッチョすぎないで、基本イケメンででも脱いだらきれいな感じで筋肉ついている、みたいな。もちろん意志堅固で、信念を貫き通すという精神的な強さも必須です。

 ところが「狙撃手」の主人公は、これといった信念は持っておらず、戦争の残忍さに慣れることができずすぐ弱音を吐いて退役したいと騒ぐ。
 しかもこれはネット上でかなり「ミスキャスト!」と言われて本当にかわいそうなのだが、主人公役の佟大為の外見が「男らしく(硬漢)ない」「軍人らしくない」ってことが批判の一番の原因らしいですね。
「日本軍の軍人が「英雄」で我が方の軍人が「惰弱」なのはどういうことだ」って論調みたいです。
「彼は青春ドラマのアイドルがお似合いだ」なんてひどすぎる評価まであります。
 ・・・・・・まあ、確かに彼は総ウケにしか見えませんが!(←おまえが一番ひどい)

 でもやっぱり、彼の演技がへただとか言うのではなく(それならある意味批判もしかたありませんが)、外見が男らしくないってのが一番の批判の理由になっているのは本当にひどいと思いますよ(実際には直接佟大為ではなく彼を主役に起用した監督が批判されているのだけど)

 佟大為の経歴を調べてみると、題名から察するに、彼は確かに「戦争モノ」はこれが始めてのように思えます。今まではわりと軽いドラマに出ていたアイドル路線の俳優だった感じ。
 それが始めての「戦争モノ」、しかも過激な描写と爆発(本物の火薬)がてんこもりで、爆発で飛び散った土砂をかぶったり毎回毎回かなりハードな状況下で複雑で難しい役を一生懸命こなしていたと思いますよ。しかも矢野氏の演技がかなりすばらしくて、大春役の役者も「実力派若手」と言われてその名に恥じない演技力で、しかも二人とも戦争モノのベテランで・・・って共演者がこんなで彼もきつかったと思うけど、別に何の違和感も感じない演技だったと思います。少なくともただ見ていた時はそんなネットのそこら中で「ミスキャスト」なんて言われているとは夢にも思わなかった。

 さて、監督はどうしてそんな「男らしく」ない外見の俳優を抗日モノの主役にしたかというと、実はかなり確信犯だった模様。

「竜紹鉄は金持ちの家の跡取り息子で、金の心配もなくドイツに留学に行った。佟大為はそんな若旦那を演じるのにぴったりの役者だ」
「我々が彼を選んだのは、彼に従来の男らしさからはずれた表現を望んだからだ。表面上は弱々しいが、内面は強いというタイプにしたかった」


 ・・・って言うか監督もけっこうひどいこと言ってんな。「男らしくない」って評価は全肯定だ。やっぱりナイス総ウケ。


・パクリ?

 ネット上でよく言われてる(らしい)のが、このドラマの序盤の戦闘シーンで別の映画である『太行山上』(有名な抗日映画です)の映像が使われていること。そしてドラマのラストシーンが『兵臨城下』という映画のパクリであるという指摘です。

 前者は・・・これ確かにやっちゃってますね。3話の戦闘シーンで明らかに時々別の画像が挿入されています。・・・や、このさっきの場面までどこにもいなかったこの日本軍の大部隊はどこから湧いてでてきたのかとか・・・そもそも画質が全然違うとか・・・・・・
 でも監督の応答を見ると、どうも彼は細かいことは気にしない性分のようです。

 後者ですが、『兵臨城下』はどうも外国の映画みたいですね? この題名は中国上映時のもので本当は何と言う題名なのか私にはわからず、確認しようがないのですが・・・。
監督の言によればこの『兵臨城下』は狙撃手ものの古典らしく当然参考にはしたがパクリではないとのこと。
 私は見ていないのでどちらの主張が妥当かは判断つかないのですが、まあこういう指摘があることだけ紹介しときます。
 ただ、私は「狙撃手」のあのラストはこの作品にとって極めて妥当なものだったと思います。もしラストをあのようにしなければ、この作品は例えば「共同抗日」や「共産党員の無私の精神」を称えるだけのものになってしまいかねなかったと思います。この作品はかなり危ういバランスのドラマで、あのようなラストにしたからこそ前記のようなテーマに集約されることなく、物語としての自立性を保ちえたのだと思います。


・軍事常識が・・・・・・

 で、その他に言われているのが・・・
「監督は軍事常識が欠片もねーんじゃないの!!」
ってことですね。

 こればかりはある意味、主な批判者である中国の軍事オタクの指摘が正しいかと(笑)(注:なおここで私が触れるのは「軍事常識」だけで、「歴史認識」については除外します。彼らはよく二つをセットで批判していますが)
 私もあまり軍事のことはわかりませんが、まあ、彼らの掲示板の書き込みやブログでの指摘はなるほどと思うことがほとんどです。中国のどこぞの巨大掲示板の軍事版ではこの監督の別の戦争モノに対して批判大会が起こっているそうです。

 これに対する監督の言い分は実にすっきりしています。

  「いや、これ、テレビドラマですから」
 「純軍事的に忠実すぎたら視聴者はわずらわしく思うでしょう。軍事オタクは(軍事的に忠実でないと)嫌がるでしょうが、私は普通の視聴者をターゲットにしたのです」



 監督、よく言った!(笑)
 まあ、確かにドラマ中ではいくら何でもありえない作戦があったりします。ご都合主義もものすごくたくさんあります。
 ただ、一言に「ご都合主義」って言ってもいろいろ種類があると思います。例えばストーリーの構成がだめだめでそれを補いとにかく話を進行させるための「ご都合主義」(例えば某種ガンダムとか・・・)、ドラマを盛り上げ話をよりおもしろく熱くするための「ご都合主義」。
 「狙撃手」の「ご都合主義」は後者ですね。大衆ドラマとしては正解だと思います。おもしろいドラマの9割はそうです。「無理の無いストーリーでうまくて完成度も高いけどおもしろくない小説」と「ご都合主義だらけでいろいろ破綻していてへただけど何故か熱くておもしろい小説」という話。

 そんなわけで私は軍事オタクではないし、細かい点は気にしないでドラマを見ていますが、一言だけつっこみます。


おまえらの三八歩兵銃は迫撃砲かーーーー!!!!!
(んで、手榴弾は艦砲射撃か?)

 や、いったい君らが持っている武器の何をどう使ったら、そんなに人が吹っ飛んだり大規模な爆発が起こったりするのか、さすがにTV前の普通の視聴者も唖然とする威力だぞ??

 ・・・ああ、言ってやった。すっきりした。なので、今後はどんなにありえない爆発が起こっても気にしないことにします。これからも観る人もぜひ気にしないでください。きっと画面には映っていなかったけど、もっとすごい武器が使われているはずです。あの大規模な爆発も手榴弾をまとめて投げつければもしかしてあのくらいの爆発も可能かもしれないなぁ~とでも思いながら観てください。私はそう思って観ています。

さて、つっこみはここまでにして最後に監督がこのドラマに込めた思いを紹介。

「まず戦争の本質とは何か考えた。(中略)ただ勝利することだけが戦争の本質なのであり、それゆえ戦争は中国人に巨大な苦痛をもたらした。それは侵略者である日本人にとっても同様である*2。私はそう思うゆえに、ある希望をこの作品のテーマに込めた。それは、私たちに必要なのは平和であり,戦争はいらない,武器を捨てよう、ということだ。このような反戦の心を持ってテーマと向き合い、それをテーマにこめた。」


「『狙撃手』にいわゆる英雄はいない。このドラマの題材は反戦であり、テーマは「武器に別れを」である」「視聴者には、どうか従来の革命歴史を題材にしたドラマと同じようにとらえないでほしい。私たちの望みは、武器をすてる、武器に別れを告げるであり、これこそが初志だ。さらにはっきりさせたいのが、戦争は美しい人間性と感情を破壊するということだ」



と、なかなか興味深いことを言っている。
監督の考えがこうだとすると、「軍人らしくない」「男らしくない」外見を持った役者を主役に起用したのも深い考えがあってのことなんだな、と思う。

なお、このエントリーで紹介した批判や監督の応答は以下のサイトでのまとめやインタビューを参考に、適当に抜き出して書きました。

ttp://ent.qq.com/a/20090912/000104.htm
ttp://www.wjwsds.com/x1/ShowArticle.asp?ArticleID=47791
ttp://ent.qq.com/a/20090928/000429.htm
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