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第4話~5話

4話~5話のあらすじと感想。
・・・痛いくらい長文です。 4話。

 竜紹鉄は自分達を助けてくれる謎の狙撃手の存在に気がつく。八路軍の大春の部隊は日本軍の猛攻撃を受け、竜の部隊と分断されてしまう。日本軍の別働隊が謎の狙撃手の潜伏場所に向かうが、すでに逃亡した後だった。本陣の段旅長は竜に撤退の許可を出すが、連絡が届かない。本陣と連絡が取れなくなったことを知った竜は、引き続き日本軍の攻撃を向かえ撃つため皆に指示をする。   

 いったん日本軍の追撃を振り切った八路軍。二勇らは、すでに充分国軍を補助する任務は果たしたのだから撤退すべきだと主張するが、大春は友軍がまだ戦っているのに撤退はできないと言い、再び日本軍に向かっていく。

 日本軍の再攻撃が始まった竜の塹壕では、杜占明が恐怖のあまり発作的に逃亡を図る。それによって後に続く者が続出するが、彼らは次々芥川の狙撃で射殺される。竜は杜に戻るよう叫ぶが彼は止まらない。竜は杜を撃ち、混乱を収拾する。


背後から竜に撃たれる杜占明

 しかし張脆が竜に拳銃を向けて反攻し、兵士たちに「彼の軍功は兄弟兵士の鮮血に染まっている」と叫ぶが、銭国良に取り押さえられる。


混乱を極める塹壕内

 日本軍を迎え撃つ竜たちだったが、芥川の狙撃によって次々撃ち殺され、まともに戦うことができない。さすがの銭国良も撤退を進言し、石頭も泣き崩れる中、竜はあくまで規定時間まで陣地を死守しようとする。同じ頃、再び日本軍と対峙した八路軍は苦しい戦いを強いられるもの芥川を発見し、彼を逃亡せしめる。

 芥川の脅威がなくなった竜紹鉄は規定の時間まで陣地を守り、やっと瀕死の杜らを含めた生存者とともに撤退する。しかし再び彼らを捉えた芥川によって暗闇の中、一人また一人と撃ち殺されていく。最後に残った竜、石頭、銭も弾が尽き日本軍に追い詰められる。竜と銭は怯える石頭に覚悟を決めるよう諭し、銃に剣を装着して日本軍に向かっていく。殺されるまでに一人でも多くの日本兵を道連れにしようと戦う三人、しかし八路軍が日本軍の背後から奇襲をかけ彼らを救出する。


これから死ななければならない石頭の肩にそっと手を置く銭国良

 二勇や大刀は敗残の竜の部隊を見て「中央軍は子供ばかりか」と呆れる。大春は竜の苦労をねぎらうが、竜は「この借りは必ず返す」と言うだけだった。

 日本軍の駐屯地に戻った芥川は作戦が失敗したことを大野に怒鳴られるものの意に介さず、謎の狙撃手が自分の狙撃地点を正確に把握していたのは日本軍内にも敵のスパイが入り込んでいるからだ、と指摘する。

 駐屯地に戻った竜らは瀕死の杜占明を医者に見せるが、彼は病院で死亡した。張脆は竜が杜を撃ったことを皆の前で言いふらし、兵士たちは「死刑執行人」と口々に言う。竜は石頭に除隊を勧めるが、石頭は「あなたについていきたい」と応える。

 文軒は銭国良と石頭をそれぞれ呼び出し、彼らから竜紹鉄の指揮が不適当であったこと,彼が新兵を故意に危険にさらしたこと,故意に撤退時間を遅らせ損害を拡大させた、などの証言を引き出そうとする。しかし二人は、竜の指揮は問題どころか最善のものであった,彼は充分に新兵の安全を図った,杜占明を撃ったのは敵前逃亡に対する合法的処置,四人しか生還できなかったのは予想外にも日本軍に恐るべき狙撃手が出現したためだと言ってかばう。

 八路軍では大春が団司令部で、竜の狙撃術がいかにすばらしかったかを報告し、皆を驚かせる。また彼は逃亡を図った新兵を撃ったが、正確に急所をはずしており殺すつもりはなかったのだとかばう。林団長は大春に同じ状況だったらおまえはどうしたかと問い、大春は同じ選択をするしかない、でもとてもつらい気持ちになるだろうと答え、竜の苦悩を思いやる。

 竜は段旅長に任務に失敗した自分を銃殺刑に処してほしい、そして日本軍の狙撃手が正確に自分の位置を掴んでいたのは旅内部に確実にスパイがいるためだと訴える。竜は兵士たちの遺体安置所へ段旅長を案内し、彼らの名を忘れないと言い、自分には他人の命を預かることはできないと歎く。段旅長は己を責めすぎるなと言い、スパイを見つけその日本軍の狙撃手を倒すために戦わなければならないと叱咤する。

 文は竜がスパイであると確信し、彼の逮捕令を出すが、あくまで竜をかばう妻の蘇雲暁と対立する。


5話


 石頭は新兵仲間たちに竜紹鉄がいかにすばらしい狙撃手で司令官であるかを力説するが、仲間達に竜を批判され喧嘩になる。その竜にも、おまえは兵士に向かないと再び除隊を勧められるが石頭は頑なに拒否する。その時、特務が竜を文軒の元へ連行しに来る。石頭は銭国良の元へ駆けつけるが、自分達にはどうしようもない,自分のことだけ心配しろ、とあしらわれる。

 竜紹鉄は自分を疑っている文軒に頑な態度で応じる。何故おまえの任務に限って待ち伏せされるのかと高圧的に聞く文に対して、情報部の工作に問題があったと逆に文を挑発的に批判し、二人はお互いへの反発を強めていく。

 段旅長は竜を解放し、文と静かだが辛辣な舌戦を繰り広げる。さらにすでに竜紹鉄を上尉に昇進させ、戦区の士気を鼓舞するため彼に「抗日英雄」の称号を送りその活躍を大々的に宣伝したと告げる。明らかに自分の追及から竜を守るための措置に文は怒りを募らせる。

 大野芥川は段旅が竜の活躍を宣伝していることを知り、彼らに反撃する必要を語り合う。芥川は段旅長の暗殺を提案するが、大野は日本軍内の敵のスパイが発見されていない状況下での危険な行動を戒める。芥川は大野の不手際をあからさまに侮蔑する。


首を斬りおとすまねをする芥川

 当の竜紹鉄は再び段旅長の元に退役を申請しに行くが、「なぜ私がおまえを手放さなくてはならないのか」とあしらわれる。竜は感情が高ぶり、自分の手は杜占明の血で汚れている,退役を認めないなら旅長の前で自殺してやるとまで言う。段旅長は「おまえは天性の軍人だ」と叱咤し、おまえは日本軍のあの狙撃手を倒さなければならないと言う。

 竜は蘇雲暁から文が自分の父親まで漢奸の疑いをかけていることを聞かされ怒りを募らせ、さらに蘇に「疑うのが彼の仕事。どうか調査に協力してやってほしい」と言われやりきれない気持ちになる。蘇は彼が退役できるよう上部にかけあうと提案するが、すでに軍人として生きる決意を固めた竜は拒絶する。しかし蘇に「あなたは苦しんでいるふりをして結局戦争を楽しんでいるのだ」と指摘され怒りを爆発させる。

 八路軍の大春は、上部が日本軍の駐屯地に忍び込みたいという提案を受け入れてくれないことに苛立ち、大刀二勇とある計画を練る。


仲間達と悪だくみ(?)する大春(右端)

 芥川の名と彼が元関東軍の特殊部隊員であることを掴んだ段旅長はその情報を竜に伝える。竜も芥川の名はドイツの射撃教官から聞いており、彼は冷血な「殺人マシーン」と言われていたことを思い出す。帰宅した文軒は蘇がまたしても自傷行為に及んでいることに気付き歎くが、竜のことを巡って言い争いをしてしまう。

 日本軍内にスパイは見つからなかった。段旅駐屯地の内部を正確に掴んでいる芥川は、闇にまぎれて侵入し段旅長を暗殺する計画を実行に移すことにする。大野は竜紹鉄の存在を心配するが、芥川は彼は夜間の射撃は得意ではないと言う。
 
 段旅長はあいかわらず夜眠れない竜の元を訪れ、酒を飲みながら腹を割って話そうとする。芥川のことが気になる竜は飲酒を拒絶するが、段旅長に強引に押し切られる。その頃、大春はある計画を実行に移すため八路軍の駐屯地を抜け出すが、仲間達がおもしろがってついてきてしまい、大所帯である場所へと向かう。


感想

 4話最大の印象的シーンは 、逃亡兵・杜占明に対する狙撃シーンであろう。他ならぬ主人公が、恐怖のあまり発作的に逃げ出した十代少年兵後ろから撃った、というシーンだ。
 ここで注目したいのは、敵前逃亡をした杜占明もそれを撃たざるを得なかった竜紹鉄も、どっちがどう悪かったというのでは決して無く、どちらも同じく視聴者の共感と同情を得られるよう描写されているという点である。

 まず杜占明。彼は敵前逃亡をしたわけだが、その前に初めて戦場に出て日本軍の猛攻撃にさらされた彼の恐怖が丁寧に描かれている。一瞬前まで隣にいた兵士が次の瞬間、眉間を打ち抜かれて絶命する、また自身にも砲弾の破片が降り注ぎ血まみれになる。最初は恐怖でパニックになって塹壕から飛び出したり、「家に帰して」とわめいていた彼であったが、逃亡の瞬間の彼にはもはやそれさえない。ただ夢遊病者のようにふらふらと呆然自失の態で逃げていく。
 彼の恐怖の描写は、初めて戦場に出た十代の兵士にとって当然とも言える心理状態と行動であり、その哀れな様を見たら敵前逃亡してしまうのもしかたない、むしろ同情すべきであるように描かれている。


恐怖にかられる杜占明

 そしてそんな哀れむべき少年を、しかも背後から撃った主人公。感情的に考えれば、この竜の行為は嫌悪感を催させるだろう。だが、ドラマではそれがどうしようもない選択であり、そんなことをした竜自身が最も苦しんでいることが描写されている。
 彼の部隊では杜の逃亡が引き金となって他の兵士たちにパニックが広がり、次々と杜に続こうとした。竜はそのパニックを沈め、他の逃亡者を阻止するため杜を撃ったわけだが、それは任務の遂行のために軍の規律を第一に考えての行為であったようには描かれていない。杜に続いた兵士たちは次々日本軍の標的になっていったし、あの状況下で部隊がパニックになっては却って誰一人として生き残れはしなかったであろう(もちろんパニックになった兵士たちはその判断ができない)。
 竜は撃つしかなかった(しかもそんな代償まで払ったのに、結局芥川によってほぼ全員が殺されてしまった)。
 竜は戦闘前に新兵たちに、全員を無事に連れ帰ることを約束している。その彼自身が新兵を撃たなければならなかった。小説版では竜が杜を撃つ瞬間の内面をこう表現している。「いったいこれは誰のあやまちだ。自分はとうとう彼を連れ帰ってやることができない」
 そして杜を撃った次の瞬間、竜は叫んでいる。「医務兵!」と。彼は自分が撃った相手を救助させている。杜は撃たれたがこの時点で死んではいなかった。


杜を撃った後呆然とする竜

 さらに戦闘終了後に竜と合流した大春は、彼らが連れていた瀕死の杜を見て後で林団長にこう報告している。弾は心臓からわずかにはずれていた,流血もたいしたことはなかったからきっと助かるだろう、と。大春の観点によれば、竜はその狙撃の腕によって杜が生き残る可能性を残していたのだ。しかし運が悪かったのか半日以上生存していた彼は駐屯地の病院で息を引き取った。その様子を戦場にはいかなかった兵士たちに目撃されたために、竜はますます彼らから疎まれていく。
 段旅長などは、彼の処置が戦場では合法であったと言って竜をかばうが、だが竜自身はそれを受けいれることができない。「自分の手は杜占明の鮮血で汚れている」と言う。


 もちろん竜がいくら苦悩しようがしまいが、撃たれた側からすればどうでもいいことだ(私は基本反軍思想の持ち主なので、敵前逃亡が罰せられるなんて馬鹿げていると思っている)。竜がいかに苦悩しようと撃たれて命を落とした者の痛みには及ばない。
 それを踏まえた上で、二人の行動はそれぞれにとって止むに止まれるものだった。そんなどうしようもないことが双方にとって多大な悲劇をもたらした。監督はきっとそれによって戦争が、あるいは軍隊そのものが根本的に持つ不条理を描き出したかったのだと思う。


 そして杜の件を除いても、監督は戦場を描くことにこだわっている。激しい戦闘の中で、他の新兵たちは何の役にもたたない。あくまで陣地を堅持しようと戦う竜の側でただ幼子のように泣いている石頭の泣き声は、激しい砲撃と銃声の音に混じって実に悲痛で秀逸な場面である。
 また撤退したものの日本軍に追い詰められた際には、竜と銭国良はそれまで何とか守り抜こうとしてきた石頭に、白兵戦に切り替え自分達と一緒に戦死するよう促すシーンもよく出来ていると思う。怯えながら泣きそうになりながら銃に剣を装着する石頭の恐怖はいかほどであったか。


白兵戦に移るため銃に剣を装着する石頭


 さて竜たちは結局、大春たち八路軍に助けられるが・・・・・・。
 えっと・・・ここの部分ね、あんまりどこがどうと書きたくないけど(なので曖昧なまま話を進めますので以下ちょっとわかりにくくなります、すいません)率直に言って視聴者に八路軍に対してある違和感を覚えさせる場面だと思うんだよね・・・・・・。
 ・・・・・・まあ、冷静に考えるとだ。あれは、確かに日本軍を叩く上でも竜の部隊を助けるためにも最善の方法だったと思う。へたに早めに合流しても彼らでは竜らを助ける力にはなれない、それより得意の奇襲攻撃を最大限に生かせるチャンスを待ったほうがいい。もちろん竜らが包囲されたらすぐに攻撃をかけ助けるつもりでいた(実際、そうした)。ただ芥川の攻撃は予想外のものだったし、時間的にもどうにもできないことではあった(彼らの位置的に言っても芥川の攻撃に気がつけた可能性は薄い)。
 と、合理的に考えればやはりあれは戦場においても竜らを助けるためにも最善の方法だったのだろうけど・・・視聴者に印象は悪くなるよね。そもそも大春以外は(心情的には)誰も本気で国軍を助けたいとは思っていないのは明らかだし。



 5話は特に大きな事件は起きない。ただ登場人物たちの関係が悪化していたものはますます悪化し、良好だったものはますます良好になるという中継ぎの回。
 どうもこのドラマ事件(戦闘)→中継ぎ→事件→中継ぎとやっていくのがパターンのようだ。ドラマ的には文軒と竜の張り詰めた対決、文軒と段旅長の丁々発止な対決、あいかわらずぐだぐだな竜と蘇雲暁のやりとり、文・蘇の夫婦のすれ違いとそれぞれおもしろいのだが、いまいち文字では伝われないな。雰囲気を楽しむ感じなので。
 それにしても自分は軍を辞めたくて辞めたくて仕方がないのにかえって英雄に祭り上げられてしまうって・・・おまえはどこのヤン・ウェンリーだ。


ピックアップ場面

文軒の聡明さについて。

 主人公にスパイの疑いをかけねちねちした対応をする文軒だが、彼は単なる嫌な奴ではない(竜はそうだと信じ、ますます悪感情を募らせていくが)。
 戦場から帰還した張脆が竜紹鉄を貶めるため、いろいろ誇張して文に報告する際(張脆もそうすれば文の興を買うと思っていた)、調子づいてこう言う。
「そうだ、日本軍の将軍が叫んだのを聞きました。「竜紹鉄以外は一人も逃がすな」と」
 張はこれで竜が日本軍と通じていると言いたかったのだろう。だがそれまで深く考えに沈みこんだ様子で報告を聞いていた文軒が、ふいに何かに気付いて眉をひそめゆっくり張を見ながら言う。

「君はいったいいつ日本語を学んだのかね?」

 この一言と文の視線に張は狼狽し、苦しい言い訳をする。もちろんちょっと考えれば、張が日本軍の将軍の言葉を理解するはずがない、というのには気がつく。しかし文は物思いに沈んでいてしかも自分に有利な情報であったにも関わらず(人は自分に都合のいい情報を信じてしまいやすい)、即座に矛盾に気付く。
 この時の役者さん微妙な表情の変化がうまく、主人公のいじめ役である文軒が実は聡明で、しかも公平さを尊ぶ人間であることを印象づける。文は張脆のみが自分に有利な証言をしていたのにその矛盾ゆえに証言を採用しなかった。





蘇雲暁の非難

「あなたは毎回毎回任務が終わるたびに、退役したいと泣きながら騒いでいるくせに、本当に退役できそうになると拒否するのね。あなたは苦しんでいる、自分を責めている、でも本当はあなたは興奮している、楽しんでいるのよ! 兵士たちの言っていることに何も間違いはないわ、あなたは虐殺者で、他人の血をすするのが生まれついて好きなのよ」

 蘇雲暁は竜が退役できるよう自分がうまく取り計らうと言う。しかし、段旅長に「おまえは天性の軍人」と説得され芥川と戦うために軍人として生きる決意を固めた竜は、その申し出を拒絶する。その彼に怒った蘇が上のようなきっつい一言を。
 竜はただでさえ深い自責の念にかられているだけでなく、兵士たちからも「虐殺者」だの「部下の命を盾に自分だけ生き延びている」だの陰口を言われまくっている竜にとって、かつての恋人(今でも最愛の相手である)蘇からのこの心無い一言は痛い。彼はつい激高してしまう。
 だがこの一言は竜の苦悩を理解しないがゆえの一言だろうか。竜は確かに戦場を厭い、深い苦しみの中にいる。だが心の奥底の無意識で、実は戦場という異様な状況に興奮し、殺し合いを楽しんでいるという部分があるのではないか。少なくとも自分の中にそのような無意識があるかもしれない可能性、あるいは将来そういう人間になってしまう可能性に竜は怯えているのかもしれない。だからこそ認めたくない自分の闇を図星でつかれて、蘇の言葉が耐え難かったのかもしれない。

 もちろん竜は殺戮を無意識下でさえ楽しむキャラではない。しかし、ここまでの展開でドラマは竜の悩み苦しみを描くことで、基本的に視聴者が竜に共感あるいは同情できるようにしている。その中で蘇の言葉は、視聴者に別の視点を提供し、竜への同情を相対化して広い視野に立ってもらう効果があったのではないかと思う。
 だがなんにしろ竜が深い苦悩の中にあり、しかも国軍の中でひたすら疎まれて孤立し誰とも苦しみを共有することができないのは確かだ。だが、理解者は思わぬところにいた。


大春のスタンス

 竜の部隊との共同作戦を終えた大春は林団長にその報告をし(その過程で、竜は新兵を撃ったが殺すつもりはなかったと思う、と彼をかばう)、その後林団長にある問いかけをされる。

「もし、おまえがそのような状況に置かれたら、どのように対処するかね」
 大春は苦い、だが真剣な顔で答える。
「あなたが言うのは、彼が逃亡兵を撃ったことですね。きっと聞かれるだろうと思って、ずっと考えていました。……俺もあのような状況では同じことをしたと思います。彼を撃つ以外にあの場を収める方法はなかった。でも、とても耐え難い気持ちになると思います。さっきも言いましたが、あの逃亡兵はまだ子供だった……」

 「ずっとそのことを考えていた」大春は、「もし自分が同じ立場だったら同じことをした」と言った。(八路軍の戦士が、逃亡兵射殺を肯定するような発言を中国のTVでするのもすごいが、それは別の話)。
 国軍の兵士たちのように竜を非難することは簡単だ。だが大春はあえて自らを竜と同じ立場に立たせて真剣に考え、彼の行為を理解すると宣言するに等しいことをする。そしてでもそんなことをしたら「とても耐え難い気持ちになる」とも言う。こういうふうに考えるなら、実際にそれを実行せざるを得なかった竜が現在「耐え難い気持ち」にあることも想像しているのではないだろうか?

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意を決し、竜と同じことをすると宣言する大春

 実行こそしていないものの、竜と同じ立場に立って考え、それがどんな気持ちになることかまで考える大春はまぎれもなく竜の苦悩を共有している。あるいは共有しようとしている。もし竜がこの言葉を知ったら、いや、自分の苦悩を共有しようとしてくれていること自体が、ほんの少し救いになるのではないか。だとしたら、苦しみを共有しようとすることは、相手の苦悩を分け合い、自分もそれを背負うことで相手の重荷を減らそうとすることだと言えるのではないか。
 そして大春のその後の竜に対するスタンスは、ほぼそのようなものとしてあった。

 もちろん竜に撃たれて死んだ杜にとっては、その行為に理解を示し、加害者を思いやる行為自体が許し難いことであることははっきりさせておく。杜の立場に立てば、そんなことをした大春も竜と同罪だ。竜の苦悩を分け合うということは、同じ罪を背負うということでもある。そして「ずっと考えていた」大春はそのこともよく理解していたのではないか。その上でそれでも上のようなことを言ったのではないかと思う。
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