恋に落ちたら@狙撃手1話

狙撃手1話の大春と竜紹鉄の出会いネタの腐SSです。
 昨日の偵察から帰って来て以来、大春連長の様子が変だ。
 団内でそれはちょっとした噂になっているし、林団長自身も気がついていた。だいたい、いつも偵察から返ってきたら真っ先に司令部に飛び込んで、必要以上にやかましく大げさに報告を行い、小さな嵐のように司令部をかき回して去って行く彼が、報告も忘れて素通りするなんておかしいと思っていた。そう、あの時も彼は何か思いつめたような顔をして足早に歩いていってしまった。

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 それに兵士たちの話によると、ずっと銃をいじくっていたかと思えば、突然手を止め長い時間思いつめた顔でじっとしていたり、時々ため息までついているのだと言う。
(・・・あの笑い話もどうやらまんざらでもないかもな)
 昨日、そんな様子の大春を見て参謀が冗談半分で言った「恋でもしたんじゃないですかね」と言う言葉を林団長は思い出していた・・・・・・。


「大春」
 とりあえず本人に聞いてみるのが一番だ、と林団長は大春を訪ねた。元々、大春は団長に懐いていて何でも話してくれる仲だ。彼はあいかわらず、どこかボッーとした集中力が著しく散漫になっている様子であった。
「昨日の偵察の報告がまだだが、どうしたのかね?」
「・・・えっ、あ、す、すいません!忘れてました!」
 大春は自分でも今始めてそれに気がついたようだった。これは相当重傷だな、と林団長は察した。
「えっと・・・実は昨日、日/本/鬼/子と遭遇しましてそのまま戦闘になったんですが・・・・・・」
 んな大事なことがあったならさっさと報告に来いよ、林団長はツッコミを入れかけたがとりあえず抑えて話を聞くことにした。
「それで、その時・・・その鬼子どもに追いかけられていた人を助けまして・・・・・・」
 どうやら野蛮な日本兵がまたしてもどこかの娘さんを餌食にしようとしていたのか。林団長は改めて日本兵への怒りを募らせたが、それでだいたい話が見えてきた。
「で、その人は無事だったのかね」
「はい。ちょっと汚れていましたけど、無事です」
「ふむ、それは何より……で、その人は綺麗な人だったかね?」
「えっ・・・だ、団長。何でわかるんですか? そうなんですよ、もう汚れていてもすごい美人で、俺、あんな綺麗な人今まで見たことないです! もう色も白くて、柔らかそうで・・・・・・」
 どうやら重傷というより危篤に近いらしく、おそらく自分でも何を言っているかわからないまま、聞いてもいないことをまくしたてている。
「わかった、わかった。・・・・・・で、その人の名はわかるのかね」
「そ、それが・・・・・・」
 大春は複雑な顔で言った。名前を聞くどころか声をかけても一言も返してもらえず、足早に去っていってしまったのだという。
「ふむ、それはきっと怖い目にあって気が動転していたんだろう。なに、心配するな、ちゃんとおまえに感謝しているさ」
「そ、そうっすかね?」
 林団長の言葉に、大春が締りのない笑顔を見せる。その目は期待に満ちていた。林団長は、純朴な美しい村娘の前で照れてうまく振舞えないこの部下の姿を想像する。実にほほえましい話だと思い、彼の肩を叩きながら言った。
「ああ、そうだとも。このへんの人ならまたいつか会えるさ。今度は落ち着いてよく話すといい。あ、いやいや、皆まで言わなくていい、わかっているから。・・・ま、節度を守ってがんばりなさい」
「は、はい! 俺、がんばっちゃいます」
 大春は敬礼付きで威勢よく答えた。

 この時の会話に嘘はなかったが、重大な齟齬があったことに林団長が気付くのは、もうだいぶ事態が複雑になった後のことである。



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林団長の想像(こんな感じの娘との微笑ましい交際)



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現実





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