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『統一戦線 崩壊編』(狙撃手)

「狙撃手」8話の裏話的SS。
「統一戦線 結成編」の続きです。
大春→竜紹鉄←九児、ね。  石頭が消えた病室で、相変わらず大春と九児は意識の戻らない竜紹鉄に付き添っていた。
 しかし、二人の間には先ほどの共同戦線を張って石頭を排除した時のような分かり合っている雰囲気はすでになく、何とも重苦しい空気が部屋に満ちていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なあ、九児」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なによ?」
 ついに沈黙に耐えられなくなった大春が口を開く。そして九児の目を見ないまま続けた。
「おまえ、疲れているだろ? もう休めよ、ここは俺がついているから」
「あら、私はぜんぜん大丈夫よ。大春こそ休んだら。私がついているから。あなた、竜小を背負って逃げて疲れたでしょ?」
「そういうわけにはいかねぇよ・・・・・・俺は連長だぞ。部下より重荷を背負う義務がある」
「こんな時だけ上官ぶらないで。・・・・・・だいたい、あなたと意識の無い竜小を二人きりにするなんて眠っている羊の小屋に狼を放り込むようなものじゃない」
「なっ! ・・・・・・おまっ、なに言って・・・・・・俺を何だと思っているんだ?」
「さあ? ・・・・・・でもなにしろ、どさくさにまぎれて私を本部に走らせて、自分はちゃっかり竜小を持っていってしまう人ですもの。あなたこそ、竜小と二人で点数を稼いじゃって」
「人聞きの悪いこと言うなぁぁーーー!! 俺はべつにこのどさくさに彼を命がけで助けて好感度をあげようとか別に考えて・・・・・・あ、いや・・・・・・」
 口がすべって思わず本音を口にしかけた大春を九児がじっとにらみつける。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おまえ、何を考えている?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・べつに」
「隠すなよ・・・・・・たぶん、おまえは俺と同じことを考えている」
「・・・・・・さすがね、こういう時だけ勘がいいんだから」

 二人は互いに顔を見合わせ、ふっ、と笑う。その時だけ、二人の間には好敵手の間だけで伝わる何かがあった。

 だがそれも一瞬で消え、後には戦場さえもひけをとらないような緊迫した空気と殺気が部屋に満ちた。・・・・・・その不穏な空気は、ただでさえ生死の境をさまよっている竜紹鉄の負担にならないはずはなかったが、二人ともそんなことはすでに思考の外にいってしまっている。

「おまえとはさっき統一戦線を張ったが・・・・・・」
「・・・・・・私たち、本来は敵同士よね」


 瀕死の竜紹鉄が死の淵から生還して目を開ると、そばにずっと付き添っていた者が泣きながら喜ぶ・・・・・・。

 これは高得点を獲得できるこの上なくおいしいシチュエーションだ。

 鳥の雛が、生まれて最初に見たものを親と認識する「すりこみ」という生物学的にも立証されている効果である。

 しかし付き添っていた者が二人以上の場合、その効果は相対的に減少する。
 いや、付き添っている者が一人である場合以外は、ほとんど効果が期待できない特異な技であるとも言えよう。


「私が竜小に付き添うわ!」
「いいや、俺が付き添う!」
「あなた、瀕死の竜小を担いで逃げて、もう十分点数を稼いだでしょ。今度は私に譲ってよ」
「はっ、冗談! ここで一気にたたみかけなくてどーする」
「あのねぇ! 瀕死の状態から生還して目を開けた時に最初に見るのが、私みたいな可愛い女の子だったら竜少も嬉しいでしょう、あなたみたいなむさくるしい男を見ても嬉しくもなんともないわ、むしろかえって気力が萎えて身体に障るんじゃない?」
「なんだとっ! 喜ぶに決まっているんだろ! 大少爺は俺の嫁なんだぞ」
「いつからそーなったのよ!」

「・・・・・・あのっ、連長、九児・・・林団長が、今日の戦闘の報告に来いって・・・・・・」

『今、それどころじゃない!!』

「ご、ごめんなさい!!」

 空気の読めない大刀が部屋に入りかけたが、二人に同時に怒鳴られ慌てて逃げ出す。

 大春は軽く息を吐いて言った。
「このままじゃ、埒があかないな・・・・・・こうしないか?」
「どうするつもり?」
 九児は明らかに警戒しながら聞く。
「交代で付き添うんだ。それで、どっちが付き添っている時に大少爺が目が覚めても恨みっこなしっ、ってことで」
 九児はしばし大春をにらんでいたが、結局うなずいた。
「どうもそれが一番いいみたいね・・・・・・で、何時間交代にしましょうか?」

 二人は竜紹鉄の方を見、それぞれ何時間後ぐらいに目を覚ましそうか計算した。
「三時間・・・いやっ、二時間交代にしよう」
「私は三時間交代を希望するわ・・・・・・いえ、待って、どっちが先に付き添うの?」
「あっ、俺後でいいぞ」
「私だって後がいいわ」

 そうして二人は順番を決めるため、そのままジャンケンを始めた。
 その傍らでは、瀕死の竜紹鉄が、二人の醜い争いに当たったのか、ひどくうなされていた。
 なんだかこのまま目を覚まさないほうがいいような気がする・・・・・・後日、竜は瀕死で病室に横たわっていた時、何故なのかはよく覚えていないが、そのような気分になったことを石頭に語ったという・・・・・・。
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