14話 変化 15話 待ち伏せ(2)

続きです。


苦痛を分かち合う


 竜紹鉄と九児の仲に嫉妬する大春。だが、竜が毎夜、戦争の悪夢に苛まれていることを知ると、そんな嫉妬もどこかに行ってしまい、彼を案ずるようになる・・・・・・このへん、大春、すごく強くていい人だ。マジで惚れるくらい素敵。

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悪夢にうなされる竜を起こす

 悪夢に苛まれていることを大春に知られ、一人、別の場所で眠れぬ夜をすごす竜紹鉄。早朝、大春はそんな彼を探しあてる。来るのに時間がかかったのは、いったいどうすれば竜をこの苦しみから救うことができるか、考えていたからだろう。

 しかし、彼の苦しみが戦争ゆえだとしたら、いったいどんな言葉であれば、彼を慰められただろう、彼を救えたであろう。そしていかなる言葉でも彼を救い得ないことは、大春もよくわかっていたであろう。

 だから少しためらいながらもその傍によりそうように座った大春は、静かにこう切り出す。


「俺もいつも悪夢に苛まれている」のだと。

 それから彼はとつとつと自分の体験を語りだす。

 連長になったばかりの時、人数も装備もこちらよりずっと優勢な日本軍部隊との戦いを行った。自分は部下たちに命じた。「死ぬまで戦え」と。その結果、自分の連隊はほとんどすべて戦死した。最小の戦士はまだ15歳であった。それから半月の間、まともに眠ることができなかった。

 大春は半分泣き出しそうになりながら、続ける。

 かつて「小さな鏡がついた銃」に目がくらんだばかりに、日本軍の武器を盗みに行って仲間を二人死なせてしまったこと。あの後は、目を閉じると死んだ二人が出てきてこう尋ねてくるという。「連長、あの銃は手に入った?」と。

 これは・・・・・・特に後者はかなりキツイ。

 大春は、なぜ突然このような、話すのもつらいことを竜に語りだしたのだろう?

 おそらくそれは、自分が竜紹鉄の苦しみを理解していることを伝えるためだ。彼を苛むのと同じ苦しみに自分もまた苛まれているのだから。そして、竜は闇の中にいるが、決して一人でそこにいるわけではないとわかってもらうためだ。

 はっきり言えば、私はこのような方法(自分の経験を語り、自分と相手が同じだと見なそうとする)が有効だとは思えない。

 だが、大切なのは、大春がこの方法を通じて何をしようとしているか、だ。

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竜紹鉄の苦しみを救うことは誰にもできない。

 だからその痛みに寄り添う。そして、それに気づいてもらわねばならない。己が一人ではないことを知ってもらうために。そして、その痛みを消すことはできないが、分かち合うことが可能だと理解してもらうために。

 大春は、まさしく竜の重荷を分かち合うために、自分が傷つくことも厭わず過去を語ったのだと思う。そしてそれこそ、話の内容自体よりもその行為自体が「苦痛を分かち合う」ために必要なことであった。

 その己が傷つくことも厭わず手を差し伸べる無償の行為にこそ、竜は多少救われたのではないかと思う。



 そして大春は続けて言う。「この痛みは、時間とともに慣れてくるものだ」と。

 これはかつて段旅長が言った「時間がすべてを解決する。経験をつめば強くなれる」というのと同じではないだろうか? そして竜はその時「強くなるですか? それは冷酷になることでは?」と言って、その考えを受け入れることを拒んだ。

 なのにここでまた大春から同じような言葉が出てくることに、違和感を覚えた。結局、このドラマは「強くなれば戦争の痛みを感じなくなる」というところに落ち着いてしまうだろうか? もしここで竜が一度は拒んだその考えを受け入れるのだったら、それはなんかいろいろと後退してしまっていると思うが。

 とりあえず、現段階では竜はまだ結論を出していない。(そもそも結論を出すこと自体が一種の後退だと思うが)

 そして大春は、なぜ自分たちは強くならなければならないか、段旅長が言わなかったその続きを語った。

 かつて大春の部隊に学生が参軍しに来た。しかしその学生は戦場の残酷さに耐えることが出来ず、ある日、銃で自殺してしまった。

「おまえは彼と同じようになってはいけない。死ぬのには確かに勇気がいる、だけど生き抜くにはさらに勇気のいることだ」

 大春は竜紹鉄に死んでほしくなかった。だからこの傷に耐えるほどに強くなれ、と言いたかったようだ。



竜紹鉄と九児

 さて、再び一緒に任務をすることになった竜紹鉄と九児は微妙な関係に。

 ・・・・・・もうこのへん、見ていて心臓がかゆくなるような、赤面せずにはいられないような二人だ。このこっ恥ずかしい展開は、もう少し何とかならなかったのか、と脚本家に言いたい。・・・・・・監督のせいか脚本家のせいか知らないが、どうしてこのドラマの男女関係の描写はこうも見るに耐えないレベルなのだろう(男同士の関係はあんなに萌え・・・・・・いやうまいのに)。

 とりあえず九児との会話で竜が国民党員ではないことが判明。自由であるためにどこの党派にも属したくないのだという。前回、大春は竜が絶対共産党に来ないことを悟り、その意志を尊重して八路軍への勧誘をやめた。

 しかし、竜はどう見たって国民党に忠誠を誓っているわけでも反共なわけでもないのに何故頑なに共産党を拒んでいるのか? その答えは彼が従うのは自由と個人主義そして自身の基準、そのための代価として孤独であってもかまわないというスタンスだからのようだ。・・・・・・う~ん、こういうノンポリが実は一番手ごわいかな? 



地雷を踏んだら・・・・・・


 今回、なぜだかやたら地雷ネタが多かった。

 地雷は足をどかした瞬間に爆発するらしいので、つまり足をどかさなければいいいのだが、もちろんずっとそこに立っているわけにはいかない。

 うっかり地雷を踏んでしまった方義球は、自分が重しになってくれた銭国良のおかげで一度は地雷から逃れた。しかし、銭国良だけを犠牲にするわけにはいかないと二人で地雷を踏み、一か八かで同時に地雷から飛びのくことに・・・・・・。

 その前に、方義球が自分の足をなごりを惜しむように触るのがなかなか良い。たとえ命があったとしても、もう足はないかもしれないからね。

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最後に自分のこれから失うかもしれない足を触る方


芥川の哲学

 

 段旅のスパイから、竜紹鉄たちは「前山口」という地点で中将を狙撃するという情報をつかんだ芥川。しかし、それでも中将には予定通りその地点を通過してもらい、竜らを返り討ちにする作戦を立てる芥川。

 芥川としては、中将が前線に視察に来ることを向こうが知って狙撃する決意でいる以上、中将の行動を秘密にすることでどこで狙ってくるかわからない状態にしているよりも、公開して襲撃地点の予測を立てておくほうが合理的に思えたのだろう。

 しかし、中将の命をおとりに使う作戦に大野は激怒。だが、芥川はこう反論。

芥川「中将が前線に来ることを選択した以上、大日本帝国の軍の威厳を振るうことを選んだ以上、危険は伴うんですよ。これは、彼の天皇に対しての職責です」



 いやぁ、戦場に来る以上、覚悟はできているんだろ。しかもこれは彼の職責でもある。なのでおとりにもなってもらう。

 芥川の論理は(とても賛成する気になれないけど)すさまじい。しかもこの「中将」は皇族出身なのだが、そんな相手の身分にも彼の哲学は惑わされることもないらしい。



ピックアップ場面



 大春は字の読めない二勇に代わって、彼の母宛の手紙を代筆しているらしい。しかし大春もそうスラスラ字が書けるわけではなく、傍らの字典を見ながら二勇の言う言葉を書いているのだが、二勇はどんどん喋る上に、難しい漢字まで使い・・・・・・

二勇「『母ちゃん、腰はよくなった?』」

大春「(書きながら)『腰はよくなった?』」

二勇「『体を冷やしちゃだめだよ』

大春「『体をひ』・・・・・・『体を冷やしちゃだめだよ』」

二勇『あんまりケチケチしないで』

大春「『あんまりケチケチ』・・・・・・ええっと『ケチケチしない』・・・・・・」

二勇「『ちゃんとしたものを食べてください』」

大春「・・・『ケチケチしないで』」

二勇「『俺は給料をもらえたので』」

大春「(字典を見て)『ケチケチ』・・・ええっと、おい、おまえもっと簡単な漢字の言葉で話せよ!」



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辞書を引きながら手紙を代筆


 なんか微笑ましい。・・・難しい漢字が必要な言葉で喋るな! って言われてもそもそも二勇は漢字を知らないので、何が難しいかそうでないかもわかりません(笑)

 それでも大春は続けて書いてやるが、二勇がためた給料の使い道について指導が入った。

二勇「『まず牛を買って』」

大春「『まず牛を買って』」

二勇「『それから家を買って』」

大春「『それから』・・・おい、二勇。牛を買うより先に家を買ったほうがいいんじゃないか?」

二勇「先に牛だよ。だって牛がいれば畑を耕せるし、作物育てて、それで食い物買って生活できるだろ」

大春「・・・・・・いいや、家のほうが重要だ。家がなかったら人も牛もどこにいればいいだよ。二勇、兄貴の言うとおりにしろ。貯金で先に家を買え」

二勇「ううん、じゃあ、先に家! 家買ってそのあと牛を買う」

大春「おうっ、先に家だ、家」




 いやいやもう兄貴風を吹かせちゃって、実に微笑ましい(笑)

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